私は１９２７年大分県で生まれ、現在は札幌市に住んでいます。 私の主な症暦は、胃腸神経症で３〜４年、対人恐怖症で約３０年、 老人性慢性鬱病で約８年間苦しみました。 主として森田療法のおかげで現在は、これらの症状から解放されて、毎日幸せな生活をしています。 私は対人恐怖症をほぼ克服した後に「鬱」になり、８年以上かかってそれを克服しました。 今回は、私の症暦とその克服過程の簡単な紹介と、それに伴って私が「ものの見方」「考え方」を どう変えていったかについてお話したいと思います。 私のものの見方、考え方は、自分自身で考え出したものも少しはありますが、 大半は先輩たちの教えを参考にしたものになっています。 その中でも森田療法の影響を最も強く受けているように思います。 その点で森田療法に対しては深く感謝していますが、私の実感としては、結果として ものの見方、考え方が変わったのではなく、先にものの見方、考え方や行動を変えることによって 自分が変わってきたように思っています。 　私はだいぶん前に、発見誌に「無駄の効用」というテーマで巻頭言を書いたことがあります。 古い人は記憶されている方もあるかもしれませんが、その内容を要約しますと 「人生に無駄はない」ということです。 その時は無駄だと思うことでも、真面目に一生懸命に取り組んでおれば、 やがてはそれが役立つ時がやってくるものです。 どのように無駄かということを確かめてみることも大切なことです。 人間の精神的向上発展は生涯続くもので、もうこれでよいということはないように思います。 神経症の「とらわれ」の悩みも人生という旅路の中で、起きるべくして起きている一つの現象であり、 その人が人間的に成熟するために必要だから今悩んでいるんだと見ることができます。 これは私の経験に基づく実感です。 よく、「神経症は病気ではない」と言われますが、その理由は 今言ったような意味からも理解できるように思います。