私は約１１年前に老人性鬱病になり、それが慢性化して約８年間苦しんで２〜３年前によくなりました。 それは、その前に３０数年間対人恐怖症で苦しみ、ゆきづまったままに生きることによって 症状を克服して、ほっとしていた時でした。 その時は、会社を定年退職して家で好きなことをして暮らしていましたが、 何時の間にか肩で息をするようになり、ため息の連発で、意欲、気力、性欲がなくなり、 体が締め付けられるように苦しく、神経症のときにはあった「生の欲望」がなくなりました。 外出もままならず、妻の付き添いでやっと買い物に付き合い、 店内で買い物篭を乗せたカートを押して妻の後をついて行くのがやっとでした。 この他に不眠や食欲不振、味覚障害、手のしびれ、などがありましたが、 何故こんなことになったのか、その時はそれが鬱の症状であるとは知らず、 そういう状態が続くので神経科の診断を受けたところ「鬱病」であると言われ、 自分もいささか驚きましたが、この状態はどれ位かければ良くなるものでしょうか、 と尋ねましたところ「まあ６か月位でよくなるでしょう」と言われほっとしたものです。 結果的には、それが１０年近くも続いたわけですが、 その時は抗鬱剤や抗不安薬など４種類の薬をいただき、毎食後飲むように指示されました。 早速指示された通り服用しましたところ、ものすごく良く効いて苦しみがなくなり楽になりました。 私はすっかり喜んで、もうこれで鬱から解放されたような気持ちになり生気を取り戻しました。 ところが２〜３か月するとまた調子が悪くなり、中止していた薬をまた飲むようになりました。 その後は、良かったり悪かったりを繰り返し、薬はその都度少しずつ別のものに変えながら、 １〜２年後からは鬱状態がずっと続くようになりました。 私の場合は「そう」状態にはならず鬱状態ばかりが続きました。 そして以前に経験した対人恐怖症によく似た症状が出てきました。 人に会いたくない、一対一の対話が特に嫌で、電話がかかってくるのが苦になり、 どうしても前向きになれず、人のために尽くすことができなくなりました。 そんな時私は、発見会北海道支部の支部長兼常任理事（当時）を担当していましたのでとても困りました。 とにかく、どんなに鬱の症状が出ても、やるべきことはやらねばならない。 年６回の常任理事会や総会への出席、これもただ出席するだけで、殆ど発言することもなく、 ただ聴いているだけがやっとでした。 とにかく出席することが大変だったのです。北海道地区の各集談会（１０か所）に年１回は必ず出席する。 これもただ出席するだけで、苦しいのをじっと我慢するのが精一杯でした。 人の悩みを聴いてアドバイスすることなど、とても出来なかったのですが、 それでも年度初めに決めた講師派遣スケジュールに従って出席し続けました。 今になって当時出席していた人達から、苦しみに耐えてじっと座っている私の姿を見て 気の毒に思ったと、笑いながら言われています。 そして今の私はまるで人が変わったように元気になったと言われます。 私自身も当時に比べると、その姿勢が１８０度変わっているように思います。 　何故、今のように自分が変わったのか、つまり、どうして鬱を克服できたのだろうか、 自分なりにそれを整理してみたいと思います。 私は鬱になってから、かかりつけの医師を交通が不便なにもかかわらず７年間変えませんでした。 それが良いか悪いかは別にして、その間には大きな波があって、 最悪の時には家から一歩も外に出れず、ひきこもり状態でしたが、 それでもじっとしていることが出来ず、ただ家の中をぐるぐる歩き回って早く夜のくるのを待っていました。 さすがにその時は、もう死んだ方が良いと思いました。 こうして私は、鬱病のために発見会活動が出来なくなったと言われるようになりました。