神経質症は一名「治そう病」だと言われている。 つまり「治そうとする病気」だと言うのである。 そう言われてみると確かにそういう一面があると思う。 だから「治そうとするのを止めれば良くなる」のであるが、 初めのうちはそれがなかなか解らないし、できないものである。 なぜ治そうとする努力が止められないのかというと、 今の状態が続いたら自分が駄目になってしまうという危機感があるからである。 だからどうしても治そうとしてしまう。 ところが治そうとすればするほど症状がひどくなり、やがて身動きできないところに追いつめられていく。 神経質症の人はたいていそういった自己執着による悪循環の中にはまりこみ苦しんでいるものである。 　そこで素直になるというのは、どういうことかというと 「ものごとを事実の通りに認めることだ」と言っていい。 認めるというのは、受け入れるとか、従うことと同じだから、 上記のように自己執着によって苦しんでいるのが事実ならば、 それをそのまま認めて、それに従うのが素直な態度ということになる。 　ところが、それに従えば「自分が駄目になってしまうのを認めなければならない」ので そう簡単にはいかない。 いかないけれども、そこから逃れる術もないので、まことに不本意であるが、 その事実に従うより他に仕方がない。 腹をくくって流れに身を任すしかないのである。それを素直な態度という。 　このように素直になるには捨て身になる部分が含まれているので難しい。 口で言うのは簡単だが現実はきびしいものがある。 素直になりたくてもなれない理由がそこにあると思う。