私は「ありのままの事実を素直に認めて生きる」ことは「当たり前に平凡に生きる」事だとも思っている。 そして最近は歳のせいか「当たり前で平凡な生活」こそ最高なものではないかと考えるようになった。 それは存在すること自体に最高の価値を認める考え方から生じたものであるが、 朝目覚めたとき、今の姿で「本日ただ今誕生」したものと考えて 有り難くその日のスタートを切ることにしている。 そういう意味で私の生活は原則として一日単位になっていて、毎日生まれ変わっているわけである。 それを別の言葉で表現すれば「いつでも感謝して死ねる」ということになってくる。 そういう心境になれば人は一日毎に人生を楽しめるようになるのではないかと思う。 　基本的には前にも述べたとおり、できるだけ是非善悪の評価をしないで、 しかも過去のことと関係づけないで、その時の事実だけに従う態度で生きているが、 実際にそういう生き方をするようになると、とても楽に生きられるし、 自分なりに興生を楽しむことができるものである。 私はそれを「当たり前で平凡な生き方」だと言っている。 以前の私はそういう生き方がしたくてもできなかったが、いつの頃からかできるようになったのである。 そのきっかけを作ってくれたのは神経質症という事実をやむを得ず受け入れた経験が 基になっているのは間違いないと思う。 　対人関係で悩んでいる人の特徴は「人によく思われたい」という欲望が強いことであるが、 それをよく自覚して、その欲望を具体的に実現するべく日々努力している人は意外に少ないものである。 そういう人にありがちなことの一つに人前で「かっこよくする」傾向のあることだ。 そいういう場合はたいてい自分のことばかり考えていて、その結果相手がどういう思いをするかは 殆ど考えていないところに問題があると思う。 自分がかっこよくすれば即ち非凡にふるまえば、相手は負けたような気持ちになって快くないのである。 逆に自分がかっこよくしなければ即ち平凡にふるまえば、相手は自分のほうがまだましだと思ったり、 自分と同じだと思って快く思うものである。 このように、かっこよくすれば自分もきついし相手にも不愉快な思いをさせるのに対して、 かっこよくしなければ少し恥ずかしいけれども、自分も楽だし相手にも快い思いをさせることになり、 両方ともいいのである。 このように相手の気持ちまで考えることができると、かっこよくする必要のないことがよくわかるのである。 　人とつきあったり会合に出る場合に、「かっこよくする必要はないんだ」と思えればとても気軽になり、 人に会うのが楽しくなるものである。