私どもは日常、自然の恩恵に生かされながら同時にまた人工的な「評価の世界」に住んでいます。 たとえば、利用価値があるかないか、経済価値があるかないか、成績が良いか悪いか、 出世したかしなかったか、収入が増えたか減ったか等々、 たいていの人はいつもそういつたことを問題にする世界に住んでいるわけです。 そしてそれらのものを対象にして競い合い、しのぎを削っているのが現実だと思います。 それというのも、それらのものが生活のために必要なものだからであります。 この世を捨てて生きる人なら話しは別ですが、少なくとも現在の社会の中で共に生きていくためには、 それらのものと無関係になることはできませんし、経済原則を無視して生きることは 不可能だと言っていいでしょう。 そういう世界は一般にせちがらく、生き苦しいものがあることは皆様ご承知のとおりであります。 　けれども、私どものこの世の生活のすべてが、そういった評価の世界だけで 成り立っているかと言いますとそうではなく、私どもの生活の中には評価のない世界も含まれています。 たとえば、何かに熱中している時とか、好きな音楽を聴いている時とか、眠っている時とか、 放心状態になっている時とか、静かに瞑想にふけっている時とか、 あるいは酔っぱらって良い気分になっている時とか、いろいろあると思いますが、 そういう時は世の中のわずらわしさから離れて、一時的ではありますが評価のない、 良いとか悪いとかを意識しない世界に入っているように思われます。 多忙な日常生活の中で、たまにはそういった世界を持って 心を休養させる必要があるのは言うまでもないことです。 そういったことは皆さんも日常適宜実行されていることだろうと思いますし、 私は今日の集談会もその中の一つだと思っています。 少なくとも集談会は世間で言う評価の通用しない場所の一つだと言っていいでしょう。 そういう意味で集談会はこの世のオアシスのような存在だと思います。 それはそれで良いのですが、今日はそういったものとはちょっと違った意味の 「評価のない世界」について考えてみたいと思います。